地唄舞上達への道⑤  ~杜季女聞書抄~

2017-02-01

★16.03.30 花崎会(撮)前島吉裕 (307)☆

 

※前回は眼の動きについてお伺いしましたが、今回は舞うときの表情についてお話を伺いたいと思います。先生の仰るように顔は大変印象の強いパーツですので、もともとの目鼻立ちについては諦めるしかないにしても、少しでも舞と一体になった美しい表情でありたいと思います。門下生の会の映像をみて毎回失望するのは自分の表情のかたさです。信じられないくらい怖い顔になってしまいます。ガチガチに緊張しているせいなのは明らかなのですが、自分ではどうすれば緊張感をださずに舞えるのかわかりません。

 

╶─意外かもしれませんが、まったく緊張しないのはよくないのです。緊張しすぎるのはもちろんいけませんが、ある程度の緊張感はあったほうが良い舞になります。適度にあがるのはむしろ良いことです。生徒さんの中には本番でも全然緊張しないというタイプの方もいますが、そういう方でも本番では案外お稽古ではしない唐突な動きをしていたりするものです。ですから緊張すまいと頑張る必要はありません。

※緊張感を全部なくさなくてよいと伺い、少しほっとしました。緊張をうまく軽減すればいいと思うだけでも気が楽になりそうです。(笑)

★16.03.30 花崎会(撮)前島吉裕 (321)☆

 

╶─眼の動きのときにも申し上げましたが、顔に神経を集中させてしまわないことです。顔に神経がいくとどうしても重心が上にいってしまいます。とにかく理想は丹田に重心をおいて、上半身はしなやかな動きで固くならないことです。重心が上がると、足が板(舞台)につかない感じになります。昔から腹が据わっていると言い方がありますように、重心を落とすことで精神的にも落ち着いている状態になるのです。

重心を落とすと足にパワーがつきます。下半身の不安定は怖いものです。舞はじめて足が地についていると感じると、平常心を保てます。

 

 

※足が板につかない感じというのは、まさに私の場合にぴったりあてはまります。私は舞はじめは比較的落ち着いているのですが、舞の途中からどんどん緊張してくるのです。足元が妙に浮いた感じになっていることが多いと思います。雑念が次々に頭をよぎるためでしょうか。地唄舞は動きの早いものではないので、身体の動きより頭の動きのほうが高速になってしまいます。扇を飛ばす振りがうまくいくからしとか、まだ終わらないわとか、観客に誰がいるとか、そんなことが次々に頭に浮かんできて舞が進むほど緊張が強くなってあがってきます。まさに先生の仰るように地に足がつかない状態になります。それで何とか心を落ち着かせようと内心で焦るうちに、歯を食いしばっているような怖い顔になっているにちがいありません。やっとわかりました。リラックスしなきゃと思うのも一つの雑念なので、そういうことも頭から落とさないといけないのだと思います。

 

╶─ひとつ私もしていることを実行してみてください。本番前に準備体操をすることです。まず軽くジャンプしてみる。ぴょんぴょん飛んで上下運動してください。それだけでも重心をお腹に落とすことに効果があります。他に自分が固くなりそうな部分を動かします。肩なら肩甲骨を動かす、首の後がかたくなりそうなら首をまわすなどしてください。精神的に落ち着こうと頭で考えるより、まず身体的な準備体操をすることです。身体を動かすことで、無用なことを考えないようにすること、頭に雑念のない状態をつくり、座禅のときのような無の状態を目指して、舞に集中するのです。

★16.03.30 花崎会(撮)前島吉裕 (308)

※先生の「舞は旋回運動(まわること)と踏み(土地を踏みしめる)」を特色としていると書いていらしたことの意味が少しばかり実感できたように思います。くしゃくしゃな頭の中の雑念を、身体を動かすことによって重心と一緒に落としてしまう、足を踏みしめて本番に臨むことを目標にしたいと思います。でも理想には程遠い現状をどうしたらよろしいでしょう。

 

╶─練習の状態を出せることが本番で一番良いものをみせることにつながるのですが、そう簡単に理想通りにはならないものです。とにかく稽古することによって不安をとりのぞくことです。稽古で、ここまでやった、もうこれ以上しようがないと思える覚悟をつくるのです。人間ですから百パーセントということはあり得ません。うまくやろうと考えなくなるまで、良い意味でのあきらめの境地に達するまで、穏やかな覚悟のできるまでお稽古するしかないのです。これ以上できないくらい練習して、本番の前日くらいまでにこの覚悟のできる状態になっていると、本番でもうまくいくでしょう。

 

顔師の神田光修さんが「いい状態に(覚悟の)出来ているひとは顔を描いていても仕上がりの顔が違う、すーっと描ける、自分はプロだからいかようにも顔を造ることはできるけれど、どうしようという不安感のあるひとは仕上がった顔がしっくりこないと仰っていました。

※自信のなさが顔師さんにも見破られて、表情に反映されてしまうものなのですね。

★16.03.30 花崎会(撮)前島吉裕 (334)

 

╶─人間は不思議ないきものなのです。俗世を考えないで、上半身から力を抜いてください。上半身のいきみが抜けて、重心が落ちているときれいだなあと思っていただけます。脱力できるかできないかは、経験を積んでわかるようになります。自分で乗り越えるしかありません。

 

※つまり私は一にも二にもお稽古が足りないということになりそうです。あれこれ心配する前に、日々の稽古を大切に積み重ねることと、本番前に準備体操をすることを肝に銘じたいと思いました。貴重なお話を本当にありがとうございました。

 

 

文責 珠真女