地唄舞の歌詞と解説 「か」の行
The KA-row
からくり的
歌詞
面白や 人の行来の景色にて 世はみな花の盛りとも 的のたがはぬ星兜 魁(さきがけ)したる
武者一騎 仰々しくも出たばかり そりゃ動かぬわ引けやとて かの念力にあらはれし 例の
鐘巻き道成寺 いのらぬもののふわふわと なんぼうおかしい物語 それは娘気これはまた
曲輪をぬけた頬冠り おやまの跡の色男 立ち止まりてはあぶなもの 見つけられたる泡雪の
浮名も消えて元の水 流れ汲む身にあらねども 変わる勤めの大鳥毛 台傘立て傘 挟みばこ
みな一様に振り出す 列を乱さぬ張り肱の 堅いは実にも作り付け さてその次は鬼の手のぬっと
出したは見る人の 傘つかむかと思はるる それを笑いの手拍子に 切狂言は下がり蜘蛛
占(うら)良し 日良し道しるべ よい事ばかりえ
解説
「からくり的」(機関的)とは、小さな弓で的に矢を当てると、様々な人形が天井から落ちてきたり、
的が裏返ったりして現われる仕掛けのことです。 舞の中では、からくり人形のフワリフワリした
不安定な動きやカタカタとゼンマイ仕掛け人形の動きの面白さが軽妙に表現されています。
また、的に当たって出て来る人形も様々で、那須与一を思わせる星兜を着た武者・道成寺の清姫・廓を
抜けた遊女と頬冠りの男・一糸乱れず整然と進む大名行列・羅生門の鬼の手・そして…最後は、
吉祥を現す下がり蜘蛛を出して締めくくります。
。
.jpg)
影法師(かげぼうし)
歌詞
あれ聞けと 時雨来る夜の鐘の声 寒さに寄する置炬燵 ついとろとろと転寝の 夢驚きて甲斐なくも よんぼり二人が差し向い 掻き立て見れど 灯火の 曇りがちなる心の内 鬢の解れや寝乱れ髪に 窶れしゃんしたお前の姿 私が痩せたも道理じゃと 私が泣けばお前も涙 ほんにこの身はあるやらないやら 夢幻の浮き世じゃな 何なんとお前は思わんす 返答しゃんせ影法師
解説
【作詞者】橘万丸
【作曲者】幾山検校・祇園の北村文(文子) 初代富山清琴の胡弓手付もある
【初 出】『新うたのはやし』(1870)
【調 弦】本調子
【作詞者】橘万丸
【作曲者】幾山検校・祇園の北村文(文子) 初代富山清琴の胡弓手付もある
【初 出】『新うたのはやし』(1870)
【調 弦】本調子
自分の影法師に向かって、思うようにならない恋の愚痴を述べる様を歌う 冒頭の“あれ聞けど”は宝井其
角の俳句の引用
【引用】地歌筝曲研究
①演劇出版社に掲載された地唄舞に関する資料からの引用
②各演目の舞の心得(お家元様)
③扇、衣装、かつらetc
.jpg)
鐘が岬
歌詞
鐘に恨みは数々ござる 初夜の鐘を撞く時は 諸行無常と響くなり 後夜の鐘を撞く時は 是生滅法と響く
なり 晨朝(しんぜう)の響きには 生滅滅己(しょうめつめつい) 入相(いりあい)は 寂滅為楽(じ
ゃくめついらく)と響けども 聞いて驚く人もなし 我は五障(ごしょう)の雲晴れて 真如(しんにょ)
の月を眺め明かさん 言わず語らず我が心 乱れし髪の乱るるも つれなきはただ移り気な ああどうでも男
は悪性な 桜さくらと謳われて いかに袂に分け二つ 勤めさへただうかうかと どうでもおなごは悪性な
東育ちは蓮葉なものぢゃえ 恋のわけ里数え数へりゃ 武士も道具を伏せ編み笠で 張りと意気地の吉原
花の都は歌でやわらぐ敷島原に 勤めする身は 誰と伏見の墨染 煩悩菩提の撞木町より 浪花四筋に通
い木辻の 禿(かむろ)立ちから室(むろ)の早咲き それがほんの色ぢゃ 一二三四(ひいふうみいよ)
夜露雪の日 下関路を 共にこの身を馴染み重ねて 仲は丸山 ただ丸かれど 思い染めたが縁ぢゃへ
解説
和歌山県道成寺(どうじょうじ)に伝わる安珍と清姫の伝説に由来する曲です。その後の後日譚として作
られた能「道成寺」では、大蛇によって焼かれた鐘を僧侶達が鐘供養した。その供養の場に、美しい白拍
子(しらびょうし)が現れた。白拍子は舞を奉納すると言い、舞い始めたが、突然、鐘の中に飛び込んだ
。鐘が落ちた。僧侶達は祈祷の力で鐘を持ち上げた。すると中から大蛇が現れた。それは安珍清姫伝説の
大蛇であった。大蛇は炎を吐いて暴れたが、僧侶たちの祈りの力によって大蛇は追いやられた。という話
。 その能をもとにして 歌舞伎「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」が生まれ
ました。白拍子の美しい娘踊りが華やかに構成されています。そして、この歌舞伎をもとに、次にうまれ
たのが地歌「鐘が岬」です。歌舞伎「京鹿子娘道成寺」のなかで使われる曲達の中から何曲目かを抜き出
して、つなげて、地唄舞に合うように雰囲気を整えたものです。 江戸の歌舞伎の豪華絢爛さをかもし出
す曲達を、地唄舞という抑えた雰囲気の舞に合うよに作り直した曲です。
.jpg)
鉄輪
歌詞
忘らるる 身はいつしかに浮き草の 根から思いの無いならほんに 誰を恨みんうら菊の 霜にうつろう
枯野の原に 散りも果てなで今は世に ありてぞ辛き我が夫の 悪しかれと 思わぬ山の峰にだに 人の
嘆きは生うなるに いわんや年月 思い沈む恨みの数 積りて執心の鬼となるも理や いでいで恨みをな
さんと 笞(しもと)振り上げ後妻(うわなり)の 髪を手に絡巻いて 打つや宇津の山の 夢現とも別かざ
る浮世に 因果は巡り合いたり 今更さこそ悔しかるらめ さて懲りや思い知れ ことさら恨めしき 徒
し男を取って行かんと 臥したる枕に立ち寄り見れば 恐ろしや御幣(みてぐら)に三十番神ましまして
魍魎鬼神(もうりょうきじん)は穢らわしや 出よ出よと責め給うぞや 腹立ちや思う夫をば 取らで剰(あ
ま)さえ神々の責めを蒙(こうむ)る悪鬼の神通 通力自在の勢い絶えて 力も弱々と 足弱車の巡り合うべ
き 時節を待つべしや 先ずこの度は帰るべしと 言う声ばかりは定かに聞こえ 言う声ばかり聞こえて
姿は目に見えぬ鬼とぞなりけり
解説
この曲は、能の《鉄輪》(かなわ)の物語をもとに作られた曲です。 若い女に気移りした夫に復讐する
ために、貴船の社に詣でて、生きながら鬼神にしてほしいと懇願し、ついには鬼神になったという物語で す。
.jpg)
