地唄舞の歌詞と解説 「そ」の行
The SO-row
袖香炉(そでこうろ)
歌詞
春の夜の 闇はあやなしそれかとよ かやは隠るる梅の花 散れど薫りはなほ残る 袂に伽羅の煙り草 きつく惜しめどその甲斐も 亡き魂衣ほんにまあ 柳は緑紅の 花を見捨てて帰る雁
解説
作曲:峰崎勾当 作詞:錺屋治郎兵衛。
二上り端唄。峰崎勾当が師の豊賀検校を偲んで作曲した追善曲。
「古今和歌集」にある大河内躬恒の和歌、
春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる
から歌詞を取り入れ、「それかとよ か(豊賀)やはかくるる…」と、豊賀検校の名前を読み込んでいる。袖香炉とは、ジャイロ式の仕掛けで中が水平に保たれており、袂に入れて持ち運べるようになっている携帯用の香炉。闇夜にも薫る梅の花、香炉から上る伽羅の煙といった香りの表現、後半の「柳は緑紅の花」(唐の詩人蘇東坡が「柳緑花紅真面目」と吟じた詩文によるもので、よく知られた禅語)を見捨てて「帰る雁」(春の季語)という視覚的な表現が組み合わさっている。亡き人をしのぶ、しっとりとした美しい詩情のある曲であるとともに、華やかな風情もかんじられる。
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袖の露(そでのつゆ)
歌詞
白糸の絶えし契りを人問わん つらさに秋の夜ぞ長き あだに問い来る 月は恨めし 月は恨めし 明け方の枕に誘う松虫の 音も絶え絶えにいとどなお 荻吹く風の音信も 聞くやと待ちてわびしさの 涙の露の憂き思い 臥してまろ寝の袖にかわかん
解説
作曲:峰崎勾当 作詞:油屋茂作・市朝(油屋茂作・近松播磨の合作説もあり)
二上り端唄。
袖の露とは、衣の袖に置く露ということで、悲しみの涙で袖が濡れることのたとえであり、秋の季語でもある。冒頭の「白糸」は「絶えし」、「解けし」などの枕詞で、自分の心は恋しい相手の思いのままになることを、どのような色にでも染まる白い糸になぞらえたもので、「白糸の絶えし契りを…」と、絶え絶えの契りを嘆く言葉から、曲は始まる。秋の夜長、いたずらに差し込む月の光が情けないという、独り寝のさみしさ、切なさといった女心を描く。夜更けの月、松虫、荻といった様々な秋の風物を読み込み、つやっぽくも、和歌の手法を取り込んで上品に仕上げられている作品。
参考文献
江口 博監修「日本舞踊全集」第三巻. 日本舞踊社.
岡田万里子編著「日本舞踊曲集成②京舞・上方舞」別冊「伝統芸能シリーズ」演劇出版社. 2005
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