地唄舞の歌詞と解説 「ゆ」の行
The YU-row
雪
歌詞
花も雪も 払へば清き袂かな ほんに昔のむかしのことよ わが待つ人も吾を待ちけん 鴛の雄鳥にもの思ひ羽の 凍る衾に鳴く音もさぞな(はさぞや)さなぎだに 心も遠き夜半の鐘 聞くも淋しきひとり寝の 枕に響くあられの音も もしやといつそせきかねて 落つる涙のつららより 辛き生命は惜しからねども 恋しき人罪深く 思はぬことの悲しさに 捨てた憂き 捨てた浮世の山かづら
作詞・作曲
作詞:流石庵羽積
作曲:峯崎勾当
解説
地唄及び地唄舞の代表的な名作。実在した大坂南地の芸妓が好きな男性に捨てられて尼となり、過ぎ去りし日の恋を想う心境をうたったもの。「心も遠き夜半の鐘…」の後の、「雪の手」と呼ばれる長い合の手は、しんしんと降る雪の感じを見事にとらえたもので、「雪」を地唄の名作たらしめ、その後の邦楽の様々な曲にも使われている。流派によって持ち物や振り付けはさまざまであるが、花崎流含め、絹張りの傘を持って舞うことが多い。歌い出しの美しい情趣から、女のわびしさや諦観、凄艶さも浮き彫りにさせる点に難しさがあり、とりわけ、傘の扱いには技巧の修練が要求される。
参考文献
1988.『日本舞踊全集』第6巻 演目解説.日本舞踊社.
藤田洋. 2001.『日本舞踊ハンドブック改訂版』三省堂.
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由縁の月(ゆかりのつき)
歌詞
憂しとみし 流れの昔なつかしや 可愛い男に逢坂の 関よりつらい世のならい 思わぬ人に堰き止められて 今は野沢の一つ水 澄まぬ心の中にもしばしすむは由縁(ゆかり)の月の影 忍びてうつす窓のうち 広い世界に住みながら 狭う楽しむ真(まこと)と実(まこと) こんな縁(えにし)が唐にもあろか 花咲く里の春ならば 雨も薫りて名やたたん
作詞・作曲
作曲:鶴山勾当
解説
思いもよらぬ男に身請けをされて、今までつらい場所だと思っていた遊里から離れ、もう好きな人にも逢うこともかなわないという遊女の悲しみを、月に寄せてかこつという内容。さびしさの中にも艶のある、洗練された曲である。
宝暦の頃に作られた古い曲であるが、上方で活躍した歌舞伎役者の三代目中村歌右衛門が、実在した名妓夕霧をモデルにした「吉田屋・廓文章」を上演した際、大店の若旦那である伊左衛門が遊女夕霧を待ちわびている場面に、この曲を長唄にうつして使用して以来、地歌の方もさらに流行したという。歌舞伎の演目と非常に関係が深いため、歌詞は夕霧と伊左衛門の二人に結び付けられて解釈され、振りもまた、多くの流派で、夕霧・伊左衛門を思わせる振付になっている。
参考文献
1988.『日本舞踊全集』 第6巻 演目解説.日本舞踊社.
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夕顔
歌詞
住むや誰 訪ひてやみむとたそがれに、 寄する車のおとづれも
絶えてゆかしき中垣の、 隙間もとめて垣間見や
かざす扇にたきしめし、空だきもののほのぼのと、 主は白露光を添へて
いとど栄えある夕顔の、花に結びし仮寝の夢も 覚めて身にしむ夜半の風
作詞・作曲
作曲:検校
解説
源氏物語の『夕顔』をうたったものであるが、直接物語の筋をうたうのではなく、物語の背景を前提として、詩的に自由に唄として創作したものである。
住処の中垣に咲く花にその名が由来する夕顔は、別名「常夏の女」とも呼ばれ、源氏の友人でありライバルでもある頭中将との間に一女(のちの玉鬘)をもうけるものの、正妻の嫉妬を恐れ、市井に隠れて暮らしていた。互いの名を隠して源氏と契りを交わすものの、六条御息所の生霊に取り殺されてしまう。
参考文献
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夕暮れ
歌詞
夕暮れに 眺め見渡す隅田川 月に風情を待乳山
帆あげた船が見ゆるぞえ アレ鳥が鳴く 鳥の名も みやこに名所があるわいな
作詞・作曲
不詳
解説
隅田川夕景の風情を舞う舞。
待乳山は現在の台東区浅草7丁目辺り。緑豊かな丘に聖天さまと呼ばれる本龍院などがあり、文人墨客に愛された。
うた沢の代表曲。うた沢は、平坦に歌う端唄に対して、渋みを加味し節回しもゆっくりと語るように歌う。「大会吾妻諷」(よくよせたあづまのひとふし)嘉永2年(1849年)刊に所収。
元は上方小唄。人気曲で替え歌が多い。
参考文献
Wikipedia-うた沢
世界音楽全集34 春秋社
京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター 上方座敷歌の研究 上方座敷歌集成
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夕立
歌詞
夕立や 田をみめぐりの神ならば 葛西太郎の洗い鯉 酒がこうじて狐拳
ほんに全盛な事じゃぞえ 堀の船宿竹屋の人と 呼子鳥 閨の夜に
吉原ばかりが月夜かな そそる店先格子さき 来るか来ないかの畳算
ほんに辛気なことじゃえ 格子にもたれて 向こうの人向こうの人と 呼小鳥
作詞・作曲
不詳
解説
冒頭部分、向島三囲神社にある句碑にもなった宝井其角の句「游ふだ地や 田を見めぐりの神ならば」を掛詞で聴かせて、江戸の風情に遊ばせる舞。
葛西太郎は、隅田川のあだ名からつけた川魚専門の料亭の名。鯉の洗いはお刺身の一種、狐拳は三すくみのお座敷遊び。竹屋は山谷堀の船宿、竹屋の渡しの跡碑が隅田公園にある。向島三囲神社傍の茶屋都鳥は女将の「たけやー」と舟を呼ぶ声が美声で有名だった。
呼子鳥は、人を呼んで招いているような声で鳴く鳥の総称。カッコウ、ホトトギスなど。
参考文献
浅草大百科
小唄忘備録500番
国語辞典
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