~第十回 花崎杜季女の会~

 
 第十回花崎杜季女の会について、杜季女師にお伺いしました。

 
※今回の公演のテーマは「巴」ということですが、どのような経緯で実現されたものでしょうか。
 
竹本越考さんとはお友だちで、以前からご一緒に何か出来たらと話し合っていました。三,四年前に越考さんから「巴御前」はどうかしらとご提案いただき、私もそれはいいなと思って新作を舞台にあげようということになりました。一緒に木曽まで行き「巴」の生きた土地や空気にふれて、取材のようなこともいたしました。
 
邦楽界の重鎮でいらっしゃる千野喜資先生に、古典にのっとった言葉で詞章を書いていただき、作曲は鶴澤三寿々先生にお願いいたしました。お二人には素晴らしい詞章と音楽を創作していただきましたので、舞と共に存分に味わっていただけたらと思います。

※先生の舞の芯にあるものは、「巴」という伝説のヒロインに響きあうと思うのですが。
 
小さい頃は、巴の話を読んだり聞いたりして日本のジャンヌ・ダルクみたいな女性というイメージを持っていました。今は、巴が愛するひとのために、女の身ながら男と伍して必死に生きようとしていたところに魅力を感じます。
 
※「巴御前」という女性を表現するにあたってご苦心なさったことなどございますか。
 
巴は武将でもある女性ですから、薙刀を持って合戦場に向かいます。ですから、今回の地唄舞にも薙刀を使います。薙刀使いは、尾上墨雪先生に教えていただきました。
薙刀の刃を自分に向けるか外に向けるかは、流派によって違うそうです。流派によって違うことを知って、薙刀は決まった型があるのではなく自由に扱っていいと学びました。私は巴なら刃を自分のほうに向けるのではないかと考えて、その握り方にいたしました。
 
※薙刀の握り方に流派の違いがあることは初めて知りました。その他に今回の舞台を鑑賞する上で、先生の演出の工夫がございましたらお教えください。
 
今回の舞台構成ではあえて休憩を入れませんでした。最初の演目「菊の露」はご存知のように亡きひとを偲ぶ曲ですが、能楽堂にふさわしく舞台を死の世界に誘って場を浄め、巴を呼び出す意味があります。その後に素浄瑠璃が二十分ほど続いて舞になります。一時間十分ほどの舞台を一つの物語として「巴」の世界を表現したいと思っています。
 
※「巴」という花崎杜季女新作の充実した舞台が今から楽しみです。色々なお話をありがとうございました。
文責 珠真女