地唄舞上達への道③ ~杜季女聞書抄~

地唄舞上達への道③
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※上手い下手が一番分かるのは、舞の振りから振りのつなぎ方だと思います。上手な人は舞が美しい動線で流れて停滞しないのに比べて、私などは振りと振りのつなぎ目に自分の素が出てしまう気がします。つまり一つの舞の中で、振りが細かくぶつ切れになっているような気がします。極端なたとえだと、幼稚園のお遊戯のように右手を挙げてさあ今度は左足出さなきゃ、次にこうするああ動くと意識しているような……。門下生の会の自分の舞の録画を見て毎回反省します。
舞の上手なひとには他にも色々な理由がありますが、下手な舞は間違いなく振りから振りへのつなぎがまずいのです。
 
╶─地唄舞は空気感を意識して、まわりの空気を極力乱さない動きが大切です。一つの動作、たとえば扇と一緒に手を落とすときにも、すっと落ちる場所、この通り道しかないという場所があります。変な場所を通ると空気の抵抗感があります。そのスポットを外して流れに逆らって無理に動かすと動きに何とも言えない固さがでてしまうのです。重くなります。このことはワークショップなどでも参加した皆さんにお伝えして実際に色々な場所に動かして体験していただくと、ふしぎに皆さんにここしかないという通り道がわかっていただけます。とにかくお稽古して実感していただくことしかありません。
 
 
※つまり振りと振りのつなぎかたが不自然というのは、空気をたくさん動かしてしまっているということでしょうか。
 
╶─振りから振りにうつるときに、空気感を意識できると自然な流れになると思います。
いつも空気の通り道を大切にしてください。空気を邪魔しない動きです。動きに必要ぎりぎりなところ、急所のようなものを見つけることです。振りは空気の流れ道のようなもので、それが日本の省エネの動き方、ぎりぎりまでそぎ落とされた、省エネの動きでもあります。
ただ必ずしもその動き方ばかりではないのが舞の奥深さです。ふつうは一つの舞の中で八十パーセント、九十パーセントは重力に逆らわないように、周囲の空気を乱さないように動きますが、十パーセントくらいはそれに反する振りが入ります。目をひく動き、空気を押したり、空気をたくさん動かす振りで変化を入れています。振りというのはそのように考え抜かれたものなのです。
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※空気を乱さない動き方に近づけるようにお稽古するしかありませんけれど、益々上達への道が遠のいた気がします。(笑)
 
╶─╴もうすぐ三鷹の新しいお稽古場がオープンします。そこで月に一回くらい生徒の皆さんに他の方のお稽古を見ていただく日を作ろうと計画しています。上手なひとは他のひとの舞をよく観ています。自分以外の人のお稽古を見るととても勉強になります。ひとの舞を観るのは大事です。自分が吸収しきっていないものを他のひとの姿をみることで、よりわかるようになります。
生徒さんを教えていていつも感じるのは、その人その人によって心に入る言葉が違うことです。同じ内容を説明していても、ひとによって理解に届く説明が違います。他の方のお稽古を観ることで、自分のものにできなかった改善点が明らかになるでしょう。
 
※発表会は自分なりの精一杯の到達ですが、お稽古はその手前の問題だらけの状態なので見られることが恥ずかしくなります。
 
╶─その恥をたくさんかくことが、精神力の勉強になるのですよ。
 
※世阿弥のいう「上手は下手の手本、下手は上手の手本」ということでございますね。観ることも観られることもお稽古と噛みしめて、がんばっていかなくては。
 
文責 珠真女